「リーダーの一流、二流、三流」から学ぶ発達障害者のマネジメント

身辺雑記

「リーダーの一流、二流、三流」から学ぶ発達障害者のマネジメント

はじめに

人材育成コンサルタントの吉田幸弘氏の著書「リーダーの一流、二流、三流」。リーダーが抑えておくべきスキルと考え方が「一流、二流、三流」と3段階の視点で述べられています。この本で紹介されている内容に共感する部分があったので、発達障害者のマネジメントに役立つヒントを考えてみました。

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部下に対する考え方

三流は「厳しさ」を、二流は「楽しさ」を、一流は「部下の成長」を重視すると書かれています。発達障害者をマネジメントする場合も「厳しさ」を重視するのは論外です。「楽しさ」は重要ですが、これだけでは自走力が身につかず息切れします。

過去記事で「小学生の子が勉強にハマる方法」の考察でも書きましたが、やはり大事なのは「自己肯定感」。その自己肯定感を「成長」をもって実感させてあげることが重要です。「成長」することは「楽しさ」にもつながりますからね!

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理想のリーダー像

三流は「威厳」を、二流は「統率」を、一流は「共感」を重視すると書かれています。前述の部下に対する考え方と同じく「威厳」は論外。弱い犬ほどよく吠える…と言いますが、「威厳」を重視するのは前時代的ですよね。(かく言う私も、威厳を重視していた過去があったので耳が痛いです)

発達障害者のマネジメントにおいては「統率」と「共感」の両方が求められます。

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部下の戦力化

三流は「ひっきりなしに指示を出し」、二流は「フラットな関係を築き」、一流は「サポート役にまわる」と書かれています。「威厳」を重視するリーダーと同じく、指示ばかり出すリーダーは自信のなさが浮き彫りになり、かえって部下の信頼を失います。「知りたがり」のリーダーも同様です。

一方、発達障害者の雇用においては「サポート役」に徹してしまうと能力が十分に発揮されないということが起こります。能力を発揮させるためには丁寧な伴走が必要です。伴走の仕方も障害特性によって異なるので、それぞれの個性に寄り添った伴走が「合理的配慮」につながります。

フラットな関係を築きながら、社員の能力に興味を持ち、適切な指示を出し、自走し始めたら任せてみる、こういったバランスが求められます。発達障害者の雇用で成果を出している人たちのマネジメント能力は、まさにこの「バランス」にあると思います。

自分の見せ方

三流は「有能さ」を、二流は「物わかりのよさ」を、一流は「無能さ」を演じると書かれています。「無能さ」というのが字面ではわかりづらいのですが「みんなで俺を助けてくれ」という姿を演じるという意味です。孫悟空が元気玉をつくるときと同じですね、非常に共感。「無能」は「有能」でなければ演じられないですから。

前述した「部下の戦力化」と同じで、発達障害者のマネジメントではこれらがバランスよく求められます。発達障害者には自己肯定感が低い方が多いです。「有脳」で「物わかりのよい」直属上司の存在は本人の自己肯定感を支えるのに非常に有効です。

ある程度の自走力が出てきたら「無能さ」を演じて成長を促します。成長スピードは十人十色なので、個性に合わせて「役作りをする」というマネジメント能力が求められます。「自分がいないと困るんだ」「自分は会社の一員なんだ」という自己肯定感は非常に大切です。1 on 1 が大切なのも同じ理由ですね。

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特例子会社の代表就任以降ずっと続けている全社員との 1 on 1。その目的や効果、実際の 1 on 1 のエピソードについて記事にしました。ご興味ある方はぜひご覧ください。

仕事の配分

三流は「できる人の仕事増やし」を、二流は「平等に配分し」を、一流は「一部の仕事をやめることを検討する」と書かれています。生産性の高いマネジメントでは「やらないことを決める」と意思決定は重要です。

発達障害者に限らず、障害者雇用においては「やらないこと」を最初から決めておくことが重要です。その理由は、障害特性によって「そもそもできないこと」「能力が発揮されない環境」がはっきりしているからです。

私が代表をしていた特例子会社グリービジネスオペレーションズでも「断る仕事」を決めていました。このポリシーは面接や採用メッセージ上でもはっきりと伝えていて、社員の安心感にもつながっていました。

さいごに

本書における「一流のリーダー」と発達障害者にとっての「いいリーダー」には共通点もある一方で、後者に求められる「バランス」感覚には専門性を感じました。本当にいいリーダーというのは、部下の個性によって「マネジメントスタイルの使い分け」ができるリーダーなのかもしれません。