「『ついていきたい』と思われるリーダーになる51の考え方」から学ぶ発達障害者のマネジメント

身辺雑記

「『ついていきたい』と思われるリーダーになる51の考え方」から学ぶ発達障害者のマネジメント

はじめに

スターバックスのCEOを務めた岩田松雄氏が自身の経験をもとに書いた「『ついていきたい』と思われるリーダーになる51の考え方」。この本からいくつかの「考え方」をピックアップし、大人の発達障害者の雇用やそのマネジメントに役立つヒントを考えてみました。

人を動かすより、まず自分を動かせ

ついていきたいリーダーになるには「努力をすれば、必ず報われるという信念を持つことが重要」と書かれています。障害者雇用のマネジメントに限らず、組織のリーダーにとって必要な要素ですね。

障害者雇用は決して華やかな世界ではありません。多様性が叫ばれる時代になり、否定的なことを言う人は少なくなりましたが、諸手を挙げて応援してくれる人はまだ少ない。そんな環境でもあっても、障害者雇用に取り組む強い信念を持ち続けることが強い求心力につながります。

発するべきは「ミッション」である

ついていきたいリーダーになるには「自分たちの存在理由であるミッションを発信することが重要」と書かれています。スターバックスにはオペレーションマニュアルはあるがサービス(接客)マニュアルはないそうです。それは以下のミッションが現場のすみずみまで浸透しているから。

「人々の心を豊かで活力あるものにするために ひとりのお客様、1杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」 (引用元:starbucks.co.jp/company/mission.html

ミッションドリブンな組織は、マニュアルにとらわれないため環境変化に強いんですよね。スターバックスを訪れるお客様には色々な人がいるはずですが、その満足度は一様に高い。それは、スタッフに「ミッション」が徹底された上で働く自由度があるからです。

一方、障害者雇用や特例子会社は、単体で事業を推進しているわけではないので「ミッション」は定義しづらいかもしれません。そこでおすすめなのは「ビジョン」の定義です。ビジョンでは「未来の自分たちはどのような姿になっていたいか」を表現します。ミッションが難しければ、ビジョンを必ず定義してください。

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部下の意見を積極的に聞く

ついていきたいリーダーになるには「部下の意見を積極的に聞き、組織を一緒につくっていくことが重要」と書かれています。リーダーに必要なコミュニケーション力ですね。ただ、障害者雇用においては、「萎縮せずに言いたいことが言える雰囲気をつくる」だけでは不十分です。

特に発達障害の方は、会話のキャッチボールができない、話が散漫になる、一方的に話し続ける、意図を汲み取れない等、コミュニケーションに苦手意識を持っている方が非常に多いです。一義的に「部下の意見を積極的に聞く」という意識よりも、部下の個性を理解して、それぞれの接し方を個別に最適化する意識が重要です。

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部下の意思決定力を鍛える

ついていきたいリーダーになるには「自分の頭で考える部下を育てることが重要」と書かれています。「これはどうしましょう?」と部下が意思決定を求めてきたとき、これを絶好の部下育成のチャンスと捉え、「で、あなたはどう思いますか?」「で、あなたならどうしますか?」と聞くべきということです。

この考え方には賛成ですが、発達障害者とのコミュニケーション上は気をつけるべき点があります。質問に対して質問返しをする行為は、相手を萎縮させてしまいます。さらに「決断しないリーダー」に責任転嫁されている印象を与えてしまう可能性もあります。やるべきことは「一緒に考え、最後の意思決定を部下にさせる」ことです。

「これはどうしましょう?」と聞いてきたということは、何か意思決定できないハードルがあるわけです。まずは、そのハードルが何かを探ります。そして、そのハードルを超えるためのサポートをしてあげればいいのです。「部下に考えさせる」のではなく「部下が考えるための障壁を取り除く」意識で接してください。

さいごに

障害者雇用のリーダーシップや組織の考え方について最近思うことがあります。やや飛躍しますが、昨今話題の「Web3」文脈でよく登場する「DAO(分散型自律組織)」に非常に近い考え方だということです。

DAOは、志を同じくする世界中の人々と協力するための効果的で安全な方法です。メンバーが共同で所有し、管理するインターネットネイティブなビジネスのようなものです。 そこには、グループの承認なしには誰もアクセスできないトレジャリーが組み込まれています。 意思決定には提案と投票が用いられ、組織内の全員が発言できるようになっています。(引用元: ethereum.org/ja/dao/

組織はみんなものでありリーダー(中央集権)のものではありません。役割はあっても階層はなく、みんなが共感できるミッション(ビジョン)の実現が原動力となり、透明度の高い議論が行われる。そして「成功すればみんなのおかげ、失敗したらリーダーが責任をとる」そんな組織が、これからの日本を変えていくような気がします。