発達障害者の障害者雇用の実態と工夫(1) 〜第69回発達支援力アップデートセミナー〜

障害者雇用

発達障害者の障害者雇用の実態と工夫(1)

はじめに

1月28日に行われた、こども発達支援研究会主催「第69回発達支援力アップデートセミナー 」の講演資料と、回答しきれなかった質問に対するコメントをまとめました。ご興味ある方はぜひご覧ください!

投影スライド(プレゼンテーション資料)

質疑応答(時間内に回答できなかった分)

Q. 【質問】障碍者同士、またはジョブコーチと障碍者の間で、障害特性や病名等を開示することはどのようにお考えでしょうか。私がジョブコーチとして勤務する所では個人情報保護の観点から伏せられております。一方で、全員なにがしかの障害を抱えている前提ですから、そこでピュアサポート的な支援を受けることは重要なことと思うのですが。

開示するか否かを当事者が選択できるのが良いのではないでしょうか。「病気」は別として「障害特性 = 個性」と考えれば、それは個人情報とは違います。自分の特性を隠したい人もいれば、周囲に理解してもらいピュアサポートを受けたい人もいる。本人の意思を尊重した柔軟な運営ができるといいですね。

【質問】現在就労継続支援B型支援事業所で支援員をしています。不登校気味の経過をたどって卒業された方が利用を考えています。この方がストレートに企業で働くのには難しいため、徐々に長時間働く習慣をつけてステップアップさせていきたいと考えています。

現状は、就労継続支援B型を利用し始めるとその他の選択肢を検討する機会は限られていましたが、2024年の4月に施行が予定されている法改正で導入される新サービス「就労選択支援」により、柔軟な進路変更がしやすくなるはずです。※参考PDF:障害者総合支援法改正法施行後3年の 見直しについて(議論の整理(案))

【質問】大学生です。アルバイトもしたいのですが、発達障害があり様々なことが不安です。就労移行支援事業所は就職を方のサポートだけなのでしょうか。アルバイトをするためのサポートはどこかで受けることはできるでしょうか?

私が知る限り、一般就労への支援が主になります。ただ「障害者採用 アルバイト」と検索するだけでも、WEB上で様々な求人情報を入手することはできるはずです。

【質問】知的障害者は 就労移行支援事業所を利用できますか?

利用できる事業所も存在します。 こちらのサイトでは、エリア ✕ 障害特性(身体・知的・精神・発達)を条件指定して、全国の就労移行支援事業所を検索することができます。

【質問】就労移行支援事業所ではない事業所から就職に進めたいときに企業側から一番ポイントになる点はどこにありますか。

無断遅刻・欠席をせず、少なくとも週20時間以上の勤務を安定して継続できることがポイントです。企業にとって、障害者雇用率にカウントできない方の採用はどうしても優先度が下がってしまいます。安定した勤怠は、雇用率にカウントするための最低条件になるからです。

【質問】1on1の頻度を教えていただけますか。

講演でも話した通り、私は事業部門と特例子会社の代表を兼務しておりました。そのため「社長との 1 on 1」の頻度は週に一回、一回につき2〜3人。社員にとっては数ヶ月に一度の機会になります。ただ、現場の管理スタッフとの 1 on 1 は週に一度のペースで実施していました。

特例子会社の社長が取り組む社員との 定期 1 on 1
特例子会社の代表就任以降ずっと続けている全社員との 1 on 1。その目的や効果、実際の 1 on 1 のエピソードについて記事にしました。ご興味ある方はぜひご覧ください。

【質問】雇用者に対する仕事上の評価基準は、客観的に見てわかるような、共有可能なものになりますか?

評価基準が共有可能か否かは企業のポリシーによると思います。人事評価における重要な要素は、一般に「透明性」「公平性」「納得性」の3つ。それは健常者であっても障害者であっても変わりません。ただ、100%客観性が担保されるものではなく、そこには雇用する側の主観や今後への期待値、足元の業績や市況環境など、さまざまな要素が加味されます。その点も、健常者でもあっても障害者であっても変わらないと思います。

さいごに

講演後のアンケートにも一字一句すべて目を通しました。90分じっくり話したつもりでしたが、まだまだ話せることがあるなと感じました。アンケートに「本日の講師から『この話も聞きたい!」と思ったテーマは?…」という項目があったので、その中からいくつかピックアップし、別の記事をアップしてます。

発達障害者の障害者雇用の実態と工夫(2) 〜第69回発達支援力アップデートセミナー〜
発達障害者の障害者雇用の実態と工夫について。セミナー後のアンケートにあった「本日の講師から『この話も聞きたい!」と思ったテーマは?…」のご意見・ご質問からいくつかピックアップしコメントをまとめました。今回は前編です。ご興味ある方はぜひご覧ください。