特例子会社の社長奮闘記(9)

特例子会社の社長奮闘記

特例子会社の社長奮闘記(9)

はじめに

ついに最終回です! 第9回目の本記事では、特例子会社のプロモーションについて書きたいと思います。プロモーションといっても、対外的な広告宣伝活動ではありません。仕事を切り出してくれる(発注してくれる)親会社やグループ子会社に対し「自分たちの存在をどう認知させ、受注相談をしてもらうか」という話になります。

  1. 経営目標の設定(定量目標や企業ビジョン)
  2. 障害者雇用の基礎知識や他社の先行事例を把握
  3. 特例子会社についての現状把握(オフィス環境や人事制度、福利厚生等)
  4. 特例子会社で働く社員の現状把握
  5. 特例子会社で働く社員の課題抽出
  6. 特例子会社に仕事を発注してくれる本社及びグループ子会社の現状把握
  7. 特例子会社に仕事を発注してくれる本社及びグループ子会社の課題抽出
  8. 特例子会社の改善(合理的配慮の強化、社内制度の充実、採用、人材育成など)
  9. 改善された特例子会社のプロモーション(業務の受注拡大)

このシリーズを初めてみるという方は以下の記事を先にご覧いただくことをオススメします!

人事経験ゼロのマーケターが取り組んだ障害者雇用📌
人事経験ゼロのマーケターが取り組んだ障害者雇用。発達障害者の雇用と戦力化、そして特例子会社の代表として取り組んだことを「特例子会社の社長奮闘記」として残していきたいと思います。本記事では前提と全体構成について書きました。

過去記事の一覧はこちらから。

発達障害者を雇用する特例子会社の社長奮闘記
人事経験ゼロから取り組んだ発達障害者の雇用と戦力化。本職であるマーケティングの考え方を活かし、特例子会社の代表として取り組んだことを「特例子会社の社長奮闘記」として残していきたいと思います。

受注業務は待っていても拡大しない

障害者が十分に能力を発揮できる環境を整えて、社員の採用・戦力化が進んだとしても、実際に担う仕事がなければ「持続可能な障害者雇用」は実現できません。特に「特例子会社」の場合、障害者雇用促進法のもとで設立されたとしても、株式会社であれば「営利企業」としての経営も求められます。

第7回の記事で具体的に書いていますが、グループ会社であるが故の「費用対効果の高さ」を強みに、ある程度の業務の切り出しは十分に可能です。一方、「専属の営業部隊」を抱えているわけではないので、それ以上の受注の拡大には工夫が必要です。

特例子会社の社長奮闘記(7)
7回目の記事「特例子会社に仕事を発注してくれる本社及びグループ子会社の課題抽出」について書きました。人事経験ゼロから取り組んだ発達障害者の雇用と戦力化。本職であるマーケティングの考え方を活かし、特例子会社の代表として取り組んだことを「特例子会社の社長奮闘記」として残していきたいと思います。

仕事の相談を増やすために①(活動の認知を広める)

「障害者雇用」や「特例子会社」の存在とその活動をもっと知ってもらう必要があります。方法は色々ありますが、私が代表をしていた特例子会社 グリービジネスオペレーションズ(以下、GBO)で効果が高かった方法は3つあります。

社員専用のポータルサイトに情報掲載してもらう

最近は、イントラネット上に社員専用のポータルサイトを開設している会社も多いです。そのサイト上に、定期的にお知らせを掲載してもらうことで認知を高めます。常套手段ですね。社内専用の広報チームがいれば、取材やインタビュー記事を掲載してもらうのもオススメです。

上位職位の人の見学を誘致し、その様子をSNSに投稿する

以下の記事でも書いていますが、私は、GBOの代表を専任でやっているのではなく、本社の事業部門を兼務していました。その人脈を活用し、できるだけ上位職種の人に「障害者雇用の現場を見てもらう」という活動を積極的に行っていました。

障害者雇用の難課題「業務の切り出し」
障害者雇用の難課題「業務の切り出し」。特例子会社を通じて一定の成果をあげた経験から、持続可能な障害者雇用における「業務の切り出し」の重要さ、そしてそれを行うポイントについて書きました。ご興味ある方はぜひご覧ください。

「上位職種の人」というのは、その会社の「インフルエンサー」です。その影響力を活用し、見学の様子を自身のSNSアカウントやGBO社のSNSアカウントで発信するというのを繰り返しました(もちろん許諾の範囲で)。ただ、現在は在宅勤務が増えたことで、あまり実行性がないかもしれませんね…。

外部メディアに取り上げてもらう

自助努力でどうにかなるものではありませんが、外部のメディア(TV、新聞、ネットニュース等)に取り上げてもらうことも効果が高いです。何かしらの表彰を受けることで会社としてプレスリリースを発信する機会が得られれば最高です。GBOでも、当時の活動を評価いただいて何度か外部メディアに取り上げてもらいました。

メディア掲載・講演実績
メディア掲載・インタビュー

仕事の相談を増やすために②(気軽に問わ合せられる)

認知が拡大しても受注につながらなければ意味がありません。GBOでも、認知拡大の手応えがあってもなかなか仕事の相談が舞い込まず、悩んだ時期がありました。社内に聞き回ってわかったのは「誰に連絡したらいいかわからない」という理由でした。

「(社長である)自分に連絡くださいよ!」と思ったのですが、全社員全員と面識があるわけでもなく「怠慢だった」と反省しました。オススメは Microsoft Forms や Google Forms といった無料ツールで問い合わせフォームをつくり、そのURLを認知拡大に混ぜて広めることです。これだけでかなり改善しました。

さいごに

以上「特例子会社の社長奮闘記」の最終回はいかがでしたでしょうか? 特例子会社の代表は2020年末に辞任しましたが、2021年となった今でも、多くの会社が「発達障害者の雇用と戦力化」に悩み、試行錯誤している実感があります。昔と比べれば状況はかなり改善されましたが、まだまだ変化が足りない。

私自身は精神科医でもなけれな臨床心理士でもありません。日本における障害者雇用を批評する立場にもありません。ただ、実際に現場で発達障害者の方と深く接し、障害者雇用を行ってきた「経験者」として、世の中に表出化されていない暗黙知を発信することでもっと「変化」を起こせるのではないかと思っています。

次回は「編集後記」と題し、今、私自身が考えていることを書いてみたいと思います。このシリーズを読んでくださり本当にありがとうございました!!(編集後記を見る