特例子会社の社長奮闘記(7)
はじめに
第7回目の本記事では、前回の記事で洗い出した本社及びグループ子会社の業務から課題を抽出します。まさにその「課題」こそが、特例子会社に切り出す仕事の候補になります。
- 経営目標の設定(定量目標や企業ビジョン)
- 障害者雇用の基礎知識や他社の先行事例を把握
- 特例子会社についての現状把握(オフィス環境や人事制度、福利厚生等)
- 特例子会社で働く社員の現状把握
- 特例子会社で働く社員の課題抽出
- 特例子会社に仕事を発注してくれる本社及びグループ子会社の現状把握
- 特例子会社に仕事を発注してくれる本社及びグループ子会社の課題抽出
- 特例子会社の改善(合理的配慮の強化、社内制度の充実、採用、人材育成など)
- 改善された特例子会社のプロモーション(業務の受注拡大)
このシリーズを初めてみるという方は以下の記事を先にご覧いただくことをオススメします!

過去記事の一覧はこちらから。

課題の解決=コスト削減
結論から言うと「課題解決」とは「コスト削減」です。これがシンプルで一番わかりやすい。事業部門といっても、本社やグループ子会社には多岐にわたる業務があり、各部門で抱えている課題も多種多様です。それでも、全部門が歓迎してくれる唯一の課題解決が「コスト削減」です。そのために、第6回目の記事で「社外への支払いが発生している業務」の洗い出しを行いました。
実際に各部署でどんな業務をしているかを把握します。ここで洗い出された業務から、特例子会社に切り出すものを見つけることになるため、やみくもに洗い出すわけではありません。「社外への金銭の支払いが発生している業務」というのが条件です。
この表に関しては、条件をクリアさえしていれば、とにかく量(網羅性)が大事です。ここに列挙された業務から一つでも特例子会社に切り出すことができれば、確実にコスト削減効果が得られます。
社外への支払いが発生している業務 | |||||
業務委託 | 派遣・アルバイト | 外部発注 | |||
1 | 事業部門A | 山田太郎 | ◯◯に関する業務 | ◯◯に関する業務 | ◯◯に関する業務 |
2 | 事業部門B | 山田花子 | ◯◯に関する業務 | ◯◯に関する業務 | ◯◯に関する業務 |
特例子会社や障害者雇用で担える業務
次に、列挙した業務の中から、特例子会社や障害者雇用で請けることができる業務を切り出します。切り出し基準は雇用している障害者の持つ能力・スキルによって変わるので、一概に「これ」といった基準を定義するのは難しいのですが、私が「発達障害者」を戦力化する上で最初に意識した切り出し基準を3つご紹介します。
- 短納期でない仕事
- 納期が厳守でない仕事
- 電話対応がない仕事
言い換えれば、この3つのうち1つでもあてはまる仕事は「合理的配慮」の文脈で請けけないようにしていました。この3つを基準にしてしまうと切り出せる業務なんてなさそうに見えますが、コスト削減効果とセットであれば可能性は十分にあります。3つの「ない」に当てはまりそうな業務をマーキングして、その担当者に直接交渉しにいきます。
社外への支払いが発生している業務 | |||||
業務委託 | 派遣・アルバイト | 外部発注 | |||
1 | 事業部門A | 山田太郎 | ◯◯に関する業務 | ◯◯に関する業務 | ◯◯に関する業務 |
2 | 事業部門B | 山田花子 | ◯◯に関する業務 | ◯◯に関する業務 | ◯◯に関する業務 |
コスト削減効果は見込めるのか
社外支出がなくなる
外部の会社に発注していた業務が自社のリソース(特例子会社や障害者雇用)でまかなえるようになれば、単純に社外への支出がゼロになります。障害者雇用は、障害者雇用促進法上で定められた企業の義務であり、誤解を恐れずに言えば、そのために発生する費用は税金と同じで逃れることはできません。
それであれば、戦力として活用しない手はない。ほんの一部でも、社外に発注していた業務を切り出せれば、確実に自社の利益に貢献できます。
「社外に発注していた費用 + 障害者雇用にかかる費用」が「障害者雇用にかかる費用のみ」に削減
目に見えづらいコストの削減効果
コスト削減効果はもう一つあります。社外に仕事を出す場合、必ずといっていいほど以下のような事務作業が発生します。
- 見積受領から社内稟議承認
- NDAや基本契約などの契約締結処理
- 実際の発注から検収、請求書処理
- 業務に必要なITツールのセキュリティ処理
特に、新型コロナウィルスの感染拡大によってペーパーレス化やリモートワーク化が進むことで、上記のような作業はわずらわしいものになってきました。こういった事務作業も、自社の障害者雇用や特例子会社のような100%グループ子会社との取り引きであれば大幅に削減できます。
これは、私が特例子会社の代表をしていたときもやってみて初めて実感したメリットでした。こういった「コスト削減」効果も、事業部門の「課題解決」に必ず結びつくはずです。
さいごに
本記事でお話した「業務の切り出し」をより効率的に行う方法があります。事業部門の人材が障害者雇用の仕事を「兼務する」という方法です。実際、特例子会社であるグリービジネスオーペレーションの代表をしていた私は、障害者雇用専任ではなく、事業部門の責任者を兼務していました。詳しくは、以下の記事もぜひご覧ください。(次の記事を見る)
